早駆遍路


早駆(はやがけ)とは、文字通り早く駆けることである。
ついこの間、早駆遍路とも言うべき、大急ぎで歩き遍路する若者に会いました。

聞けば、前泊は小部で、豆坂・福田・橘の3つの峠を越えて、2番札所 碁石山までざっと40km以上歩いて来たそうな。そして、今日の目的地はまだ先だと言う。

「せっかくなので一緒にお勤めしましょう」

と声をかけたが、先を急ぐので、と足早に去ってしまった。

お遍路にはいろんな形があって良いと思うが、せっかく小豆島を歩き遍路をするのだから、自然を楽しみ、人の心に触れて欲しいものだと切に思う。
昨今、お経を唱えない、朱印をしない、白装束を纏わない、カメラ片手に手も合わせないお遍路さんが増えています。
それは遍路ではない、とは言わない。しかし、それぞれに意味があって、その醍醐味を味わず、知ろうともしないで「遍路した」とするのは勿体ないと思う。
まず、そんなに急いで記憶に残るものだろうか。


とは言え、忙しい昨今、現代人は少ない休みを利用して国内や海外を旅行しています。
かく言う私も、サラリーマン時代は、出勤日の早朝に到着する航空便を利用して海外旅行をしたものです。そうでもしないと旅などというモノができないのが、現代社会の構造上の問題でもあります。

1ヶ月かけて四国を歩き遍路したり、10日間の予定で小豆島を旅する、なんてことは仕事を辞めない限り実現不可能な贅沢に違いありません。

休みが目一杯とれたので5日間で小豆島を歩き遍路しよう!

その心意気や良し!である。であるが、それなら2日間を4回にわけてお遍路してください、とすすめます。
既に何度も歩き遍路をされているベテランの方や山岳修行者ならまだしも、小豆島はそんなにせわしない島じゃないんです。のんびりしてるんです。そのゆっくりとした時間の流れに身を任せて、そこにある空気を、風を、感じていただきたい。
貴重な時間、そうじゃないととても勿体ない。

冒頭の若者は、強行軍のせいか脚を痛めていました。その後、無事結願できただろうか。
願わくば、彼の記憶に残ったモノが「しんどかった」「痛かった」ばかりでなく、楽しい土産話や、また御礼参りしたいと願う心でありますように。

慈空拝