灯に祈りをこめて ー過去・現在から未来へー
小豆島霊場会会長
歓喜寺 河野宏宜
私たちの普段の生活の中には、昔から灯りがあり、灯は私たちの生活を明るく照らし、暖かさも与えてくれると共に、私たち人間の心にも安らぎをも与えてくれます。
昔から、火には魂が宿ると信じられ、お盆の迎え火に先祖の霊魂が宿り、先祖の霊魂が家に帰ってくると言われています。またお盆の終わりには送り火にて先祖を送るのがお盆の行事であります。だから多くの地域で火を使ったお盆の行事があります。有名なのは京都の大文字五山の送り火であります。
また、高野山では天長9年(832年)に弘法大師空海が長年の夢でもあった大法会を開催しました。それが「万灯萬華会」であり、万の灯明の光が仏の智恵となって私たち衆生を救い、万の花の香りが衆生の悟りの目を開かせるようにと願って開催した法会であります。
お大師さまが、この万灯万華会の法会にて読まれた願文(願いを神仏に誓い、神仏に捧げる文)のなかに、「虚空尽き、衆生尽き、涅槃尽きなば、我が願いも尽きん」と言われています。これは「万物が存在するこの宇宙が尽き果て、生きとし生けるものがみな解脱をえて仏となり、涅槃を求めるものが皆無になったとき、私の願いも終わる」という意味であります。お大師さまは1,200年も前にこのような大きなお心をもっておられたのかと思うと感慨深いものがあります。
このように、昔の人たちは、灯明のあかりに先祖の霊魂を思い、時には灯明の灯に仏の救いを求めたのであります。
小豆島霊場会では、お大師さまの時代から1,200年の年月を経て、今ここに新しい時代の「令和」を迎えるにあたり、来たる10月22日の「今上天皇即位礼正殿の儀」(今上天皇の即位を国内外に知らしめる行事)に合わせて、小豆島において「万灯会」を開催します。
この法会は、今上天皇の御即位奉祝法会であり、今上天皇の即位を祝うことはもとより、世界平和をはじめ国内の安泰、近年多発する自然災害の物故者の供養と災害地の早期復興祈願をはじめ、小豆島霊場巡拝物故者の供養、皆さまのお家の先祖供養、皆さまの諸願成就を祈願いたします。
皆さまには、過去と現在に感謝をして、未来の平和を願い、小豆島の地に平和の灯火を照らすローソクをご奉納いただき、暗闇の中で行われる灯明のあかりの中の幻想的な法会にお誘い合わせてお参りいただきたいと思います。
合 掌
(遍照173号より抜粋)