一期一会
小豆島霊場会会長 歓喜寺 河野宏宜
私たち人間の一生は長いようで短くもあります。この一生の間に巡り合う人は限られています。「会いたい人」「会いたくてもなかなか会えない人」「会いたくなくても会わなければいけない人」いろいろな人がいます。
また、人との巡り会わせだけでなく、時間や空間などもその時その時の一瞬の巡り会わせがあります。
この人や時間や空間などの巡り会わせは、必然的でもあり偶然的なときもあり、よくよく不思議な巡り会わせであります。
今回の新型コロナウイルス禍によって、いつも会える顔なじみの遍路さんや、初めて会う遍路さんに出会う機会が少なくなったことで、遍路さんの皆さんと毎年のように顔を見て話をしていたことが改めて貴重な時であることを実感しています。
千利休の言葉で「一期一会」という茶道の言葉があり、一生に一度という意味で使われることがありますが、小豆島霊場とお遍路さんとの一期一会の関係とは、毎年の巡拝の時に出会う時であり、その瞬間は二度と同じ時間が巡ってこない大切な時であります。
しかし、今回のコロナ禍によってほとんどの霊場公認団体の巡拝や、個人先達の方々の巡拝が中止となり、この一期一会の大切な時をむかえる機会がなくなりましたことは心から残念に思います。
そこで、小豆島霊場会では今年度の小豆島霊場巡拝を中止して巡拝ができなかった遍路さんの代わりに、全先達の名前を全札所に奉納し、皆さまの家内安全・身体健全・商売繁昌・五穀豊穣・各家先祖供養などの代参巡拝を執り行い、先達の皆さんの心と小豆島霊場寺院各本尊様との絆を繋げていきたいと思っています。この状況が収束した時には是非小豆島霊場を安心して巡拝していただき、その時には新しい一期一会の大切な時間を過ごしていただきたいと思います。
その時には、小豆島霊場寺院住職や寺族をはじめ、旅館や巡拝関係業者の方々共々に皆さまを心からのおもてなしをさせていただきたいと思います。
また小豆島霊場会では、このコロナ禍によって、苦渋の選択で毎年のさまざまな行事を仕方なく中止しなければならなくなりました。
しかし今は一人一人が我慢をして、大切な人をお互いに思い合い、この危機的状況を乗り越えていかなければなりません。
小豆島霊場会では、さる四月二十一日に全霊場寺院に呼びかけて、各寺院にて午前九時に梵鐘を七遍鳴らして、コロナ禍の早期終息をはじめ感染者の早期回復の祈願と、感染物故者の供養ならびに、医療従事者の安全の一斉祈願法要を各寺院において執り行いました。
最後になりましたが今の状況が収束を迎えた時には、是非小豆島霊場に巡拝に来ていただき、皆さまとより一層の一期一会の機会を迎えたいと思っています。 合掌 (遍照175号より抜粋)